1955年のレコードデビューとなったモノラル録音盤、それから26年後48歳のときの録音であり、天才の突然の死の直後に発表された、天からの恵みのような1枚です。
10指が別々の生命体のように鍵盤を奏するテクニックと大胆な解釈で表現するピアニスト、それがグールドに対する印象です。イタリアの神経科医の言葉に”天才と狂気”がありますが、思想家の一面を示すその偏執なまでの彼の哲学に、なにか相通じるところがあるようにも思います。
それだけに、斬新なピアノ演奏にのめり込む以上に、孤高のピアニスト“グールド”の人間像に惹かれてしまう人も多く、彼が希代の芸術家たる所以なのでしょう。
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