オーディオというのは、再生音楽の音質に興味を抱けば抱くほど奥が深い嗜好性の世界であると、最近実感しています。
StereoSound No.158 巻頭言(オーディオ固有美)で菅野沖彦氏が述べられています。
「オーディオ機器は、変換、伝送、増幅の理論や設計、製造の技術がどんなに進歩しても、一つひとつの部品に至るまでが、物性からくる音の癖やキャラクターといわれる個性から逃れることはできない。」
そこにオーディオ機器選びの醍醐味が存在するのですが、機器以外のアクセサリー一つとっても、その材質、物理特性によって音質が変化するのですから、魅惑的である反面、とても悩ましき事柄でもあります。
前回の記事では、インターコネクトケーブル(RCA)とスピーカーケーブルを交換した感想を記しました。
今回は、スピーカーのインシュレーターと電源ケーブルについて触れてみたいと思います。
上の写真は、スピーカーとスタンドとの間に介在するインシュレーターです。
2種類のインシュレーターを組み合わせていて、上側の金属がoyaideのINS-US(スパイク)とINS-SP(スパイクベース)、下側がJ1 プロジェクトのC30S-J/4Pです。
当初はINS-USとINS-SPのみで音楽を聴いていたのですが、僕のシステムではどうも高域が強すぎるような傾向にあり、キンキンする耳障りな周波数帯域が気になっていました。
そこで、ソフト系のインシュレーターで高域を抑制できるのではないかと考え、予備で保管していたC30S-J/4Pを下に敷いてみることにしました。
そのファーストインプレッションをtwitterに書き留めてあります。
・「スピーカーのインシュレーターはoyaideステンレス製スパイク、スパイクベースですが、J1プロジェクトのマテリアル C+T ダンピングパッドに変えてみました。 全体的に落ち着いた感じに。 そのパッドの上にスパイクベース、スパイクを。 高域のきつさが和らぎ中低域の厚みが増しました。」
・「スパイクとベースは点接触だけど、ベースとスピーカースタンド天板は金属同士の面接触。 そのベースと天板の間にソフト系インシュレーターを介在させると、立上がりの鋭さは弱まるものの、音が滑らかにかつ中低域の厚みが増え、とても聴きやすい音色になりました。 インシュレーターも面白いですね。」
高域の鋭さが抑えられ、その分中低域側に聴感上のバランスが寄ったものと思いますが、ステンレス特有の強調されるような高域表現がかなり緩和されました。
参考にソフト系のC30S-J/4Pのみでも試聴していますが、前述のとおり全体的に落ち着いた感じになります。
これはC30S-J/4Pの振動吸収効果に因るところが大きいと思いますが、同時に低域の締まりが若干和らぐ傾向が認められたので、僕の嗜好からは外れてしまいました。
続いて、こちらはアキュフェーズの電源ケーブル APL-1 。
APL-1は、プリアンプC-3800の付属用に新規開発された電源ケーブルですが、単品でも販売されています。
そもそもプリメインアンプにアキュフェーズのE-350を使っていることもあって、同社製品なら信頼性と相性は申し分なく、電源ケーブルのグレードアップには最適だと考えました。
ただ、電源ケーブルの交換は今回が初めての体験ではありません。
過去に別のシステム(5.1chマルチ)で試したことがあり、一聴して明らかな変化は低域の量感が増したことでした。
そのような経緯から期待に胸をふくらましてしてAPL-1の試聴に臨みました。
・「電源ケーブルAPL-1が届いたので、プリメインアンプの標準ケーブルと交換。 交響曲では高域の伸びが滑らかにになり、空間の広がりが増したかのよう。 ジャズでは低域の音圧が明らかに増し、低音の質が上がりました。 全体的に音の鮮度が高まりました。 電源ケーブルの効能、あなどるべからず。」
・「滑らかで伸びのある高域、柔らかな中域、そして深みのある低域が好みの音質。 ジャンルは何でも聴くけど、基準にするのはクラシック系。 スピーカーのインシュレーターとアンプの電源ケーブルを変えてみて、一気に好みの音質に近づいた感がする。 慣れてくると、また欲がでてくるのだろうか。。。」
電源ケーブルは電気信号ではなく電気そのものを伝達する電力系ケーブルなのに、なぜこのように音質が変化するのか、その原理はよくわかりません。
プラセボ効果ではないかと疑念を抱く方もいらっしゃるくらいです。
この結果に気を良くして、CDプレーヤーにもAPL-1を導入することにしました。
・「本日、2本目の電源ケーブルAPL-1が届いたので、CDPの標準ケーブルと交換してみます。 このケーブルは太いのに柔軟なので取り回しがとても楽ちん。 これですべてのケーブルのグレードアップが完了です。 今後の投資は、ソフトの方に転換。 音楽を存分に楽しまないとね。。。」
・「CDPの電源ケーブルを交換すると、予想どおりS/Nが良くなりました。 アンプの電源ケーブル交換時ほど顕著ではありませんが、クラシック音楽では高域の伸びと小音量時の質感が改善しています。。。」
CDプレーヤーが取り扱う微小信号の変換、伝送に大きなパワーは必要ないと思うのですが、より歪みの少ない電源ケーブルの作用で信号の純度が向上したのかもしれません。
この写真は、E-350に付属の電源ケーブルとAPL-1を比べたものです。
太さの違いは一目瞭然です。
線径が太くなればその抵抗は小さくなる という物理法則は理解しているのですが…
インターコネクトケーブル(RCA)に始まりスピーカーケーブル、そして今回の電源ケーブルと、これですべてのケーブル類のグレードアップが完了しました。
その目的は、ひとえにオーディオ機器本来の性能を十分に発揮させること、CDなどの媒体に収められている音楽データを余すことなく伝送し再生することでした。
市場には、多種多様なケーブル類があります。ピンからキリまであります。
いろいろ試して音の変化を楽しむという趣向もありです。
でも僕の場合、現状の仕上がりにひとまず満足しているので、これからは音楽ソフトをもっと充実させ、音楽そのものを楽しむことに比重を置きたいと思っています。
オーディオは音楽を楽しむためにあるのですから。
(実を言うと、次なる願望はCDプレーヤーのグレードアップなんです…年末ジャンボ買わなくては…)
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