神々の山嶺 (いただき)…
最近読んだなかでとても感動した長編山岳小説です。
構想からおよそ20年。
作者自身ヒマラヤを体験すること六度。
書き出してから書き終えるまで足かけ4年。
夢枕獏氏が原稿用紙およそ1,700枚に書き尽くした、“エヴェレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に臨んだ一人の男の壮絶な物語”です。
登山に対してまったく無関心でなんの予備知識もなかった僕が、エヴェレストという大舞台と、切ないほど頂上を求め続けた男の生き様に魅了されました。
この小説と出会い、僕は登山の凄まじさを初めて知りました。
人智の及ぶ世界ではありません。
神々に運命を委ねるといって過言ではない頂の世界には、肉体はおろか強靭な精神力がなければ到底挑むなんてことはできないでしょう。
経験を積み、準備を整え、予想して、判断して、それでも自然の猛威が登りし者を襲ってきます。
まさしく“神々の山嶺”です。
そして、そんな山嶺に挑み続けることで自身の存在意義を追い求める男達がいることも事実なのです。
本書はパワフルです。パワフル過ぎます。
あとがきで夢枕獏氏が述べています。
「直球。力いっぱい根限りのストレート。」
「もう、山の話は、二度と書けないだろう。」
「これが、最初で最後だ。」
「それだけのものを書いてしまったのである。」
・・・・・
「どうだ、まいったか。」
拝承、完膚なきまでにまいりました…(_ _,)/~~
本書に登場する羽生丈二のキャラクターモデルは、一匹狼、孤高のクライマーであった森田勝氏だそうです。
佐瀬 稔著『狼は帰らず―アルピニスト・森田勝の生と死』を無性に読んでみたくなりました。。。
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