学生時代に富田勲の電子音楽の虜となり、アルバムがリリースされるごとに心斎橋の三木楽器を訪れていました。8作目となるこのアルバムは、ファーディ・グローフェ作曲の組曲“グランドキャニオン”を、オーケストラの団員にみたてた彼のシンセサイザー群“プラズマ・シンフォニー・オーケストラ”で演奏した、当時画期的な多重編成の電子交響曲でした。
これまでの富田氏のアルバムでは、オーケストラの迫力というものには主眼が置かれておらず…少なくとも私はそう感じていました…電子音ならではの創造楽器音、擬態音、そして3次元的に広がる空間表現をモットーにしてたように思います。そしてこの“グランドキャニオン”では、オーケストラの編成をシンセサイザーで演奏しながらも、グランドキャニオンが魅せる自然の表情を多彩な電子音で演出しており、その音楽を聴いているとグランドキャニオンのイメージが見事に脳裏に描かれます。
正規のオーケストラ盤もなかなか良いのですが、この曲に限っては富田勲盤を聴くと他が物足りなくなってしまいます。
過去に感銘した曲は、何かのきっかけでふと聴きたくなるもので、この曲もそうでした。いまとなってはLPを再生するプレーヤーがないのでCDを探すことになったのですが、秋葉原の大型ショップに出かけ、紙ジャケット仕様のものを見つけて購入しました。かれこれ5年以上前のことです。
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