不滅の金字塔、ウィンブルドン5連覇という偉業を成し遂げたスーパースター Bjorn Borg …
1-6, 7-5, 6-3…第4セット、ゲームカウント5-4、40-15でBorgがマッチポイントを握ります。第1セットを落としたものの続く2セットを連取し、もはやチャンピオンは疑いの無いところ。。。
しかし、そこからが歴史に残るドラマでした。第4セットのタイブレークは34ポイント22分にも及び、その間、Borgのチャンピオンシップポイントが5回、John McEnroeのセットポイントが7回。そして2セットオールのふり出しに。。。1,980年、ウィンブルドン決勝です。
ファイナルセットは壮絶な死闘です。
周囲を覆いつくす重苦しい空気と極度の緊張感、グランドスラム決勝のファイナルセットにタイブレークはありません。1ポイントごとに上がる嵐のような歓声とどよめき。TVの前からは一歩も動けず、手には汗がにじみ、息をするのも忘れて固唾を呑んだウィンブルドンの一番長い日でした。
1-6, 7-5, 6-3, 6-7, 8-6, フルセット3時間53分…試合が終了したのは、確か日本時間で午前3時ごろだったでしょうか。Borgがコートにひざまづいて天を仰いだ瞬間、僕は渾身の力でこぶしを握り緊めていました。
Borgを初めて観たのはJimmy Connorsとの試合でした。当初は、闘志をむき出し、ときには陽気なジェスチャー(Gesture)で観客を魅了するConnorsのファンでしたが、次第にBorgに惹かれていきました。
Borgのプレースタイルは鮮烈でした。
ループ型のフォアハンドとダブルバックハンド、共に強烈なトップスピンです。フォアハンドは、インパクトの位置、スピンのかけ具合、打球の方向により、ラケットのフィニッシュ位置がさまざまです。バックハンドのパッシングショットは正確無比で、なんでこんなところに落ちるのというくらい見事でした。Connors型のスクエアスタンスとフラット系(またはドライブ系)フォームが最善とされていた時代でしたので余計です。
逆三角形の上半身にカモシカのような足、極端に筋骨隆々というわけでもなく、シェイプアップされた体型にトレードマークのロングヘアとヘアバンド。無表情で淡々と試合を進める姿と、いかなる状況下においても集中力が途切れない強靭な精神力。ロンググリップモデルの専用ラケットに、金属音のする驚異の86ポンドテンション。そして、動く広告塔。。。
1,981年のウィンブルドンと全米でMcEnroeに敗れ、ワールドチャンピオンの座を明け渡してからのBorgは、まるで緊張の糸が切れたように闘志を失い、やがて公式試合から姿を消してしまいます。
勝負の世界に永遠の勝者はいません。26歳という若さで引退を決意し、勝つことへのこだわりに自ら終止符を打ちました。1,980年のウィンブルドン決勝が最高の花道だったかもしれません。そして同時にBorgの神話も完成しました。
時の移ろいにはチャンピオンが存在します。グランドスラムの優勝記録でBorgを凌駕する選手も存在します。けれども、スーパースターという称号をもつテニス選手はBorgの後にも先にも存在しないように思います。1,970~80年代の時代背景と、ConnorsやMcEnroeといった歴代チャンプ=ライバルの存在が、Borgをスーパースターに伸し上げたと言った方がいいかもしれません。
僕自身は三流のテニスを続けるも、Borgの引退したプロテニス界への興味は次第に薄らいでいきました。。。
そして昨今、再び熱くなれる選手が現れました。ナダルとフェデラーです。彼らの試合もまた、互いの意地と意地のぶつかり合いです。世界に君臨する二人、ライバルの二人、だから観ている方も彼らに惹きつけられ、あたかも当事者のように熱くなります。
ランキングNo.1の座はナダルに移りましたが、まだまだ二人のライバル関係は続きそうです。ローランギャロではナダル…ウィンブルドンは? 全米は? 彼らが争う最高のグランドスラム決勝戦をやっぱり観たいですね。
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