優しくて柔らかな音、華やかでクリアな音、温かい音、力強い音…
ピアノの美しい音色に魅了されます。
アイスランドのピアニスト ヴィキングル・オラフソン が奏でる『バッハ・カレイドスコープ』(2018年4月録音)です。
サウンド&ヴィジュアル・ライターの前島秀国さんが解説で語られています。
「フレージング、表情付け、ペダリング、すべてが有機的に働いて音の大伽藍(がらん)を築き上げながら(音量も含めた)モダンピアノ演奏の醍醐味を余すところなく伝えきっている。」※
印象的なのは、鍵盤へのタッチが繊細で多彩な表現を魅せてくれますし、ペダリングは濁りの無いきれいな響きを生み出しています。
ヴィキングルは、さまざまな時代のバッハ演奏家を研究し、新鮮な発見とアプローチを学んだそうです。エトヴィン・フィッシャー、ロザリン・テューレック、ディヌ・リパッティ、グレン・グールド、マルタ・アルゲリッチなどは、彼の演奏哲学の礎になったのではないでしょうか。※
ヴィキングルを「アイスランドのグレン・グールド」と称する書評もあるようです。ペダリングをしないで弾くリスト・スタカートなどは確かにグールドを彷彿させますが、本質的に非なる感性です。
バッハの鍵盤譜は、例えばロマン派音楽の代表的な作曲家ショパンなどから比べればシンプルに見えますが、その音楽性の豊かさや深みは随一で、胸を打つ優美な旋律、心に染み入る切ない声部、奥深い複声に感銘を受ける方も多いと思います。ヴィキングルの解釈と感性が、ピアノというモダン楽器でバッハの曲に新たな境地を開いたように私は思います。
※CD付録解説書「ヴィキングル・オラフソン記:訳・編 前島秀国氏 」「ヴィキングル・オラフソンに接して:前島秀国氏」を参考にしました。
コメント