RHC-2.5HS-S-TripleC-FM
僕の愛機は、ゼンハイザーHD650です。
これまでの記事では、USB-DAC / ヘッドホンアンプ DA-310USBの入力系と電源系の改善に傾注してきました。
今回は、HD650のリケーブルを試してみたので感想を述べたいと思います。
試聴したリケーブルは、アコースティックリバイブのRHC-2.5HS-S-TripleC-FM(通常フォーンジャック仕様)です。
貸し出し申込書 入力フォームを通して借りました。
アコースティックリバイブのヘッドホンリケーブル類は、共通して次の特長があります。
・PC-TripleCを採用(単線の優位性)
・ヘッドフォンケーブルとしては異例のテフロン絶縁や2芯シールド構造
・伝送上のノイズを完全に除去するファインメットビーズを装着
・プラグ類は全て完全非磁性体構造のオリジナル品を採用
PC-TripleCを単線で使用し、構成素材、部品にも一切妥協のない仕様であることが窺えます。
現行ケーブルとの取り換えはスムーズに行えました。
プラグ先端の2本のピンは、太さが異なるので方向性があります。
プラグの「L」「R」の表記が外向きになるように差し込みます(ヘッドホン本体の「L」「R」表記と同じ側になるように差し込みます)。
さて試聴です。
一聴して次元の異なる音に驚愕しました。
標準ケーブルの音には霞がかかっていたとしか言いようのない変化です。
音楽を構成する一つ一つの音にまとわりついていた雑味が一切消えたような印象です。もちろん、標準ケーブルで聴いていたときには、雑味が残っているなんて感じません。リケーブルして初めて以前のレベルが明らかになりました。
楽器やヴォーカルが濃密になって音像がより際立ち、拡張された音場の透明性(見通し)と相まって音源が混濁することなく再生されています。
機器の出力端子からヘッドホン本体までのケーブルに、これほどの差異を生じさせる歪みやノイズが存在していたなんて思いもよりませんでした。
低域の質感も劇的に向上しています。
打撃系はエネルギー感に満ち溢れてパワフルに押し寄せてきます。共鳴系は量感豊に空間全体に響き渡ります。
決してブーストされているような音ではありません。ソースに含まれる低域は、誇張されることなく自然体でありながら、厚みやエネルギー感などが生々しく、音楽がとても有機的です。
音声信号をピュアに伝送する。言易行難です。
アコースティックリバイブのヘッドホンケーブルは、良い音で音楽を聴き、音楽に没入し、そして音楽に感動する、というオーディオ本来の醍醐味を堪能できる秀逸なアクセサリーだと思います。
次に、取り扱い上留意すべき現象を記しておきます。
今回の試聴の最中に右側の音が途切れるようになりました。ケーブルを摘まんで動かすと音が出たり出なかったり。どうやら原因はHD650のコネクター部分の構造にあるようでした。
HD650のコネクター部は、コンタクトスプリング(コイルばね)の素線の間(ピッチ)にケーブル側のピンが差し込まれて、互いに接触するという構造になっています。下の写真は純正ケーブル装着時のダイヤフラムユニットです(クリックすると拡大できます)。
※写真を拡大すると分かると思いますが、上側のリード線が切れています。これはコンタクトスプリングを矯正しようと手を加えた際に、誤って切断してしまったのです。
自分のしてしまったことに唖然としてしまいましたが、時すでに遅しでした…> <…
次に、アコースティックリバイブのケーブル(以下 リケーブルと称す)装着時です(写真下)。
ピンの先端形状は、肉眼ではわかりずらいのですが、写真を拡大してみると、標準ケーブルとリケーブルとでは若干異なっているように思います。
ピンとコンタクトスプリングの接触具合については、標準ケーブルの方がより馴染んでいるようにも見えます。13年間標準ケーブルを使用してきたので、当然のことかもしれません。
音切れの原因として、次の2点を挙げてみました。
①コンタクトスプリングが標準ケーブルのピン形状に馴染んでしまい、リケーブルのピンとの接触性が下がること。
②リケーブルのケーブルの挙動がコネクター部に作用し、ピンとコンタクトスプリングの接触性に影響すること。
ただ写真で見る限り、リケーブルのピンはコンタクトスプリングにきちんと接しています。
実際に使用する段階でケーブルを前後左右に動かすと音が途切れたりするので、上記①と②の複合事由により、ピンとコンタクトスプリングが接触不良に陥り易くなっているものと思います。
リケーブルには単線(PC-Triple C 単線)が用いられています。そのため、取り回し性では標準ケーブルより劣ります。ケーブルの動きがコネクター部に伝わりやすいので、出来るだけ負荷がかからないように取り扱うのが良いでしょう。
コンタクトスプリングを新しいものに交換すれば、接触不良は解決すると思うのですが、前述したように(※参照)ダイヤフラムのリード線を切断してしまったので、コンタクトスプリングを含めたダイヤフラムユニットを丸ごと交換する必要があります。
数日間熟考し、次の決断に至りました。
これを機にHD660Sを新たに購入することにしました( ´ ▽ ` )
もちろん、銘機HD650は後々修理します。ディスコンになりましたし、貴重な逸品ですからね。
最後になりますが、コンタクトスプリングの交換可否について、ゼンハイザージャパン株式会社に問い合わせてみたところ、可能との回答を頂きました。
以下に回答文を抜粋しましたので、参考にしてください(問い合わせ回答日2018.8.9)。
「HD 650、ケーブル接合部のコンタクトスプリングにつきましては、単体での部品供給がございますので、当該箇所のみでの修理交換可能でございます。修理ご希望の場合は、以下リンクに記載の[修理品送付先]を参照のうえ、修理手続きをお願い致します。
http://www.sennheiser.co.jp/sen.user.FAQ.html
また、以下リンクよりご購入も可能となります。弊社から直接の部品販売は行っておりません。ご了承願います。
[e☆イヤホン様 商品ページ]
http://www.e-earphone.jp/shopdetail/000000203856/
こちらは販売単位が1個となりますので、
片耳分で2個、両耳(ヘッドホン1台)分で4個必用となります。」
コンタクトスプリングの交換には、リード線やダイヤフラムを損傷させないよう非常に繊細な作業(技量)が必要です。個人的には、購入店、ゼンハイザー製品取り扱い店に修理依頼されることをお勧めします。
【2018.08.11追記】
ケーブルを装着していない状態のダイヤフラムユニットです。
コンタクトスプリングの部分を拡大してみると、上下のスプリングとも上から2つ目と3つ目の素線の間が「ハ」の字気味に広がっているのが見て取れます。下側のスプリングの方が分かり易いかもしれません。
標準ケーブルのピン形状にフィットするように幾分変形したのでしょう。
この変形がリケーブルのピンの接触性に影響したと推定できます。
【2018.9.19追記】
本稿で勘違いしないで頂きたいのは、このリケーブル自体はとても素晴らしい製品だということです。異なる次元の音に飛躍すると言っても過言ではないでしょう。
如何せんHD650のコネクタ部の作りが甘いといいますか、精度が足りないのかなと僕には感じました(純正ケーブルなら問題無いのでしょうけど)。
だからこそ、RHC-2.5HS-S-TripleC-FMに興味をもたれたら、是非ともアコースティックリバイブの貸出制度を利用して音質と取扱性を確認してみてくださいね!
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