サンソン・フランソワ(Samson François:1,924年5月18日~1970年10月22日, フランスのピアニスト)と初めて出会ったのは、小学校4年生の頃だったと思います。
誕生日のプレゼントに父親が買ってきてくれた1枚のLP、それが“ サンソン・フランソワ/ショパン珠玉集 ベスト・オブ・ショパン”でした。
この1枚でクラシックピアノに目覚め、ショパンの虜(とりこ)になり、フランソワの大ファンになってしまったのです。挙句の果てに自ら志願してピアノ教室に通い始め、中古のアップライトピアノを購入してもらうことに。。。当初はオルガンで練習していたのですが、妹も習い始めたこともあって両親も決意したのだと思います。
一日中でも弾いていたかったのですが、団地住まいでは騒音の問題もあり、音の大きさを気にしながらせいぜい1時間がいいところでした。もし、周りに気兼ねなく好きなだけ弾くことができたなら、私の人生ももしかして。。。ショパンコンクール入賞なんてなことに(笑)。。。
まさに衝撃的なフランソワとの出会いでした。
甘美で、情熱的で、幻想的なショパンの曲…それは譜面そのものではなく、フランソワ自身の表現以外の何物でもないことに間もなく気づくことになります。
マルタ・アルゲリッチ(Martha Argerich)、アルトゥール・ルービンシュタイン(Arthur Rubinstein)、ウラディミール・ホロヴィッツ(Vladimir Horowitz)など、名だたるピアニストのショパンが当時は、テクニックは超絶なれど表現がシンプル過ぎるように感じてしまうのでした。
フランソワの演奏スタイルは、直感的ともいえる感覚で自らの想いを音で表現しています。もっと率直に言えば、彼が弾くショパンは旋律がまるで優しく、ときには熱く歌っているかのように聴き手に流れてきます。
ゆえに、感覚が不調なときは表現にも影響し、釈然としない即興性のような形で評価されることもあったようです。
歳月を経て晩年に近づくにつれフランソワの感覚と想像性も成熟し、堂々としたスケールと風格が形成された演奏に変化しました。
ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11、ピアノソナタ第3番ロ短調作品58、幻想ポロネーズなどはその典型的な例でもあり、他のピアニストと比して異様に落としたテンポには、ショパンのメロディの美しさと同時にショパン自身の晩年への移ろいを一層強く感じます。
芸術家そのものがそもそも個性の表現なのですが、それ以上に独創的、独善的と評されることが多かったフランソワは、万人に賞賛されるピアニストではなかったようです。
しかし彼のセンスと聴き手のセンスが同期すれば、まるで中毒にかかったが如く虜になってしまう、そんな演奏家だったのではないでしょうか。
ただ私の場合、冒頭でも述べましたが兎にも角にもフランソワが最初でしたので、何の違和感もなく彼の音楽に没頭していきました。
フランソワをきっかけにしてクラシック音楽全般にも興味が波及したことを振り返ると、いま思えば私にとって彼が音楽の師であったかもしれません。。。
ショパン ピアノソナタ第2番第1楽章_Samson François
ショパン バラード第4番_Samson François
ショパン ピアノソナタ第3番第1楽章_Samson François
ショパン 夜想曲作品9-3_Samson François
ショパン 夜想曲作品27-2_Samson François
(2011.12.13追伸)
フランソワのCDでHQCD版が発売されていました。
ショパン バラード&スケルツォ集とショパン ピアノ協奏曲第1番&第2番です。
私はLP版しか所有していないので、記念に購入しました。
コメント