西村寿行(じゅこう)氏の小説は、一度読み始めると、まるで魔物に取り憑かれた如く物語の中にのめり込んでしまいます。情景・心理の巧みな描写と奇想天外な展開が読む人を夢中にさせます。
国立国会図書館に登録されているのは西村寿行(としゆき)で名の読みが異なります。実兄は作家西村望。1,930~2,007年、肝不全のため東京都内の病院で死去、享年76歳でした。
私の父が寿行小説をほぼ全作コレクションしていたこともあって、早くから身近に彼の作品に接していました。本格的に読むようになったのは30歳を越えてからでしょうか。彼の作品の代名詞ともなっている“アクション・冒険”作品群は、壮大なスケールが最大の魅力です。
Wikipediaによれば彼の作品ジャンルは多岐にわたり、動物小説、社会派ミステリ、パニック小説、ハードロマン、ポリティカルフィクション、時代小説、伝奇・幻想などを手がけています。特に“ハードロマン”ものはシリーズになっているタイトルが多く、写真の文庫本も“鷲シリーズ(死神シリーズ)”で人気を博しました。
『往きてまた還らず』徳間書店 1977年、『鷲の啼く北回帰線』徳間書店 1981年、『鷲の巣』徳間書店 1985年、『母なる鷲』徳間書店 1987年、『涯の鷲』徳間書店 1990年、『鷲』徳間書店 1997年、『頻闇にいのち惑ひぬ』光文社 1983年(これは抜けています)。
未曾有の無差別殺人を仕掛けてくる国際テロに対して、警察庁公安特科隊長 中郷広秋(なかごうひろあき)と伊能紀之(いのうのりゆき)が法を無視して死闘を繰り広げる痛快アクションです。主役の二人は超能力人間ではなく生身の人間の設定であることも物語を面白くしていますが、極めて屈強で格闘のエキスパートです。シリーズでは、テロ組織から死神と呼ばれる二人は世界をまたにかけて戦います。
ハードアクションものが好きな方は、セオリーどおり“往きてまた還らず(上・下)”から是非読んでみて下さい。僧都保行(そうずやすゆき)という凶悪犯が仕掛けてくる空前絶後の破壊行為に国家非常事態宣言を発令して追跡、巧妙な心理戦と死闘…上下巻ですが一気に読破するくらいの面白さがあると思います。
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